能登聲祭2026
WHY

なぜ、歌うのか

最近、歌ったのはいつですか?

一

いま、日本で起きていること

個室で歌う人は、四千万人。

カラオケに行く人は、1年で約4,070万人(2024年度)。
日本人の3人に1人以上が、どこかで歌っています。

出典:全国カラオケ事業者協会「カラオケ白書」推計

でも、人と声を合わせる場は、細っています。

合唱団体は、全国で4,035団体(2025年1月)。前年から38団体減りました。
能楽師の会員数は、2000年度の1,545人から、2024年度は1,011人へ。

出典:全日本合唱連盟/能楽協会

全日本合唱連盟自身が、少子化と部活動の地域移行で学校の合唱機会が減っていることを公表しています。

つまり——

歌いたい気持ちは、四千万人ぶんある。
けれど、誰かと声を合わせる場所が、消えかけている。

そして、孤独。

「孤独感がある」と答えた人は、約4割。
半数の人が、何の社会活動にも参加していないと答えました。

出典:内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」(有効回答10,876件)

国も、動いています。

2024年4月、孤独・孤立対策推進法が施行されました。
国の重点計画は「人と人との交流を目的とした居場所の確保」を掲げています。

出典:孤独・孤立対策推進本部「重点計画」(令和6年6月11日決定)

二

能登のこと

奥能登4市町の人口は、地震前の58,225人から、50,674人へ(2025年11月末)。
輪島市では、30代以下が2年で26%減りました。
2025年の国勢調査速報で、珠洲市は全国で最も人口が減った自治体です。

出典:石川県推計人口/総務省国勢調査2025速報

仮設住宅では、声を出しにくい。

東日本大震災の仮設住宅の調査では、3人に1人以上が近隣の音を気にしていました。
孤独感が強い人ほど、音に敏感になるという相関も示されています。
壁の遮音性能は、建築基準法の最低基準を下回っていました。

出典:橋本典久「東日本大震災の応急仮設住宅における近隣騒音問題に関する調査研究」日本建築学会環境系論文集(2013年)

能登の仮設を対象にした同じ調査は、まだありません。ここでは先行研究として紹介しています。

声を、抑えて暮らす。
そういう時間が、能登には続いています。

三

声を出すと、何が起きるか

つながりは、認知症のリスクを下げる。

家族・友人・仲間など5種類のつながりを持つ人は、
1つ以下の人より、認知症の発症リスクが46%低い。
日本の高齢者13,984人を、約10年追いかけた研究です。

出典:Saito et al. (2018)/日本老年学的評価研究(JAGES)

社会参加は、フレイル(虚弱)を遠ざける。

趣味の会、スポーツ、学びの場。参加の種類が多い人ほど、フレイルになりにくい。

出典:JAGES(28市町・59,545人の縦断研究、日本公衆衛生雑誌)

災害のあと、地域のつながりが健康を守った。

東日本大震災の前後を追った岩沼プロジェクトでは、
地域のつながりが、被災後の健康悪化をやわらげることが示されました。

出典:JAGES/米ハーバード大学 共同研究(宮城県岩沼市)

世界の医療も、歌を使いはじめています。

世界保健機関(WHO)欧州事務局は、900件以上の論文と3,000件を超える研究をまとめ、
歌を含む芸術活動が、生涯を通じて健康の増進に寄与すると結論づけました。

出典:Fancourt & Finn (2019) WHO Regional Office for Europe, HEN synthesis report 67

元氣だから、歌うんじゃない。
歌うから、元氣になる。

四

声の芸能を、絶やさない

日本のユネスコ無形文化遺産には、声が中心にある芸能が並びます。
能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎、雅楽、組踊、風流踊——
そして能登には、来訪神「アマメハギ」と、奥能登のあえのことがあります。
会場のある七尾市には、お熊甲祭(熊甲二十日祭の枠旗行事)。
1981年に、国の重要無形民俗文化財に指定されました。
高さ20メートルの枠旗と、「イヤサカサー」の掛け声の祭りです。

出典:文化庁/ユネスコ無形文化遺産一覧

けれど、担い手が減っています。

能楽師の会員数は四半世紀で約3分の1減り、
各地の祭りや民俗芸能にも、中断・廃絶が起きています。

出典:能楽協会/群馬県教育文化事業団調査ほか

日本は、声の芸能の国です。
その声を、一日だけでも、一堂に集めたい。

五

だから、この祭りをします

謡も、民謡も、詩吟も、合唱も、ゴスペルも、J-POPも。
普段は決して一緒に歌わない声が、一日だけ、同じ場所で歌います。
こんな祭りは——たぶん世界初です。
(※がんばって調べましたが、前例が見つかりませんでした)
みんなで歌います。
歌がうまい必要は、ありません。祭りだから。
0歳の泣き声も、90歳の笑い声も、ぜんぶ歌のうち。

世界には、歌で国を取り戻した人たちがいる。
わたしたちは、歌で能登を照らしに行く。

1988年、エストニア。30万人——国民の4人に1人が歌の広場に集まり、1991年、銃を使わずに独立を回復した(「歌う革命」)。

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